新ブランド
スマートホテル「B4T」の開業。
次代に向けた
新たなホテル創造への挑戦。
PROJECT
STORY
STORY
INTRODUCTION
2023年、東京・赤羽と田端に日本ホテルの新しいブランド「ホテルB4T(ビー・フォー・ティー)」(以下、B4T※)が開業しました。日本ホテルはこれまで、東京ステーションホテル、メトロポリタンホテルズ、JR東日本ホテルメッツをはじめ、多彩な特徴を有したホテルを展開してきましたが、「B4T」はこれまでのホテルのあり方を変える、まったく新しいスマートホテルとして誕生しました。その最大の特徴は、「Suica」を活用した点にあります。利用者は予約からチェックイン、チェックアウトまでの手続きが「Suica」とスマートフォンで完結。この画期的なホテルの誕生に取り組んだメンバーに、プロジェクトの背景や経緯、今後の展望等を語り合ってもらいました。
※「B4T」の由来…Bは「Bed」の頭文字。4Tは「for Travel・Train・Time・Trust」を組み合わせた造語。
PROJECT MEMBER
M.H.さん
JR東日本ホテルメッツ本部
ホテルB4Tインフォメーションセンター 支配人
2006年入社
S.H.さん
JR東日本ホテルメッツ本部
企画・開発グループ 開発・施設チーム
2015年入社
K.H.さん
本社 開発推進部 開発グループ
2018年入社
CHAPTER 01
「B4T」プロジェクトへの参加。
新たなホテルブランドを
つくり上げる。
「B4T」プロジェクト
への参加。
新たなホテルブランドを
つくり上げる。
最初に「B4T」開業に至るまでの経歴を教えてください。
M.H.
私は入社後、JR東日本ホテルメッツ(以下、メッツ)に配属となり、フロント業務からキャリアをスタートさせました。その後、関東エリア内のメッツを異動し、副支配人及び支配人業務に従事しました。5店舗目となるメッツ秋葉原で開業支配人として開業業務を担当。その後、JR東日本ホテルメッツ本部に異動し、広報やブランディング業務に就き、2022年8月に「B4T」のプロジェクトに参加しました。S.H.さんは、今日集まったメンバーの中では、最も早くプロジェクトメンバーにアサインされました。当時、どのような気持ちでしたか。
S.H.
私もM.H.さんと同じく、入社後JR東日本ホテルメッツに配属されフロント業務を経験、その後本部に異動となりオペレーション構築等の業務に携わっていました。そして、2021年12月に「B4T」のプロジェクトに呼ばれたわけですが、まずは驚きましたし、日本ホテルの歴史を刻むような大きなプロジェクトに参加することに若干の不安もありました。ただ、今まで培ってきた知見を活かせるのではないか、自分自身の成長に繋がるのではないかという期待感もありました。
K.H.
私は二人と異なり、入社後配属されたのがホテルメトロポリタンでした。宿泊部で1年半ほど客室管理業務に従事し、その後は本社総務部人事グループに異動、新卒採用業務を担当しました。続いて、JR東日本グループ外企業への出向を経て、2023年9月に「B4T」のプロジェクトに参加することになりました。出向期間中から新ブランドの話は耳にしていましたので、そのプロジェクトに自分が参加できることにワクワクしたことを今でも覚えています。
M.H.
そうですね。私もホテルB4Tインフォメーションセンターの支配人にアサインされたとき、まずは喜びと嬉しさがありました。支配人としてメッツ秋葉原の開業を担当しましたが、メッツの場合、ブランドが確立しています。今回のプロジェクトは、一からホテルブランドをつくり上げていくことであり、そこで生み出されたもの、構築されたものはブランドの根幹に関わるものです。大きなやりがいを感じましたし、「B4T」という新しい日本ホテルのブランド立ち上げは、自身のキャリアにも大きな意味を持つと思っています。プロジェクトは、メッツ本部や日本ホテル内の他部署など、社内横断的に約15名のメンバーが招集されスタートしました。定期的に打ち合わせを重ねてブラッシュアップし、ホテルのポジショニングとコンセプトを明確にしていきました。
S.H.
その中で決まったコンセプトが、「SSP(Smooth・Slim & Flexible・Points of Premium)」でした。これは、「Suica」とモバイルテクノロジーを駆使し、こだわりのある空間としつつも、過剰なサービスを省き、手ごろな価格で、快適であり自由な滞在体験を提供するというもの。私の担当の一つであった客室備品やアメニティを検討する際もこれらのコンセプトをもとに厳選し、意味を持たせて決定していきました。
CHAPTER 02
「Suica」活用に向けて
乗り越えた壁。
お客さまの時間を
「1秒も無駄にしない」。
「Suica」活用に向けて
乗り越えた壁。
お客さまの時間を
「1秒も無駄にしない」。
「B4T」開業の背景、その特徴や取り組みを教えてください。
M.H.
これまでホテルは対面接客が当たり前でした。接客の品質は、ホテルが提供するホスピタリティの品質とパラレルな関係にありました。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大という世界的なパンデミックは、社会全体の意識を変えつつあります。コロナ禍を経て、対面サービスは必須ではないのではないか、そんな意識が社会に芽生えていると思います。そうした社会や時代の変化を受けて、「B4T」は誕生しました。すなわち、「Suica」を活用することで、予約からチェックイン・チェックアウトまでセルフでホテル滞在が完結します。また省人化運営を実現することで、ホテル業界の慢性的な課題である人手不足の解消にも寄与すると考えています。S.H.さんは、「B4T」最大の特徴である「Suica」活用に関し、初期の時期から検討を進めていました。
S.H.
ええ。私の役割は、端的に言えば「B4T」で提供するサービスを検討することでした。その重要なテーマは省人化におけるオペレーションであり、それはつまり「Suica」活用における課題を抽出し解決していくことでした。最も大きな課題の一つだったのが、「Suica」をルームキーとすること。通常、ホテルのルームキーというのは、カード内にお客さま情報を入力し入退室の鍵の役割を果たしますが、「Suica」は個人の所有物なのでカード内に情報を入れることはできません。そのため、ネットワークを介して個人の識別を行う仕組みとしました。しかし、その仕組みはネットワークを介するため、微妙なタイムラグが発生してしまいます。お客さまにとってそれはストレスに繋がりかねません。それを外部のシステム会社と協働して是正できたことが、省人化オペレーションの実現に繋がったと思います。
M.H.
そうですね。「B4T」は、「Suica」をルームキーとして使用し、お客さまに1秒も無駄にしないスムーズな宿泊体験を提供することを最大の特徴としています。そのため、お客さまが感じるストレスをいかに極小化するかがプロジェクト当初からのテーマでした。私も現場オペレーションを統括する立場として、「Suica」活用の取り組みに参加していましたが、手軽でスピーディなデジタルコミュニケーションの実現が、快適な顧客体験の提供、すなわちCS(顧客満足)の向上に繋がっていると思います。
K.H.
当時、私はまだプロジェクトに参加していませんでしたが、ホテルでは当たり前だった「フロントスタッフが案内する」という従来の接客方法を、「B4T」では大胆に取り除いたことに非常に驚きました。それでも接客というサービス自体がなくなるわけではないと思いますが、CS向上も含めて、どのような取り組みを進めたのですか?
M.H.
チェックイン、チェックアウト、部屋での滞在時等、スタッフが直接お客さまと接することは基本的にありませんが、困りごとがあれば、遠隔地からオンラインチャットやビデオ通話でスタッフがサポートすることは、K.H.さんも承知のことと思います。私たちが開業に向けて注力したのは、お客さまからの問い合わせをいかに減らすかということでした。そのためホームページの作り込みや各種販売サイトの見せ方など、どのようにすれば私たちが伝えたい情報が人を介さずにお客さまに伝わるか、その点は非常にこだわりましたね。
S.H.
そうですね。問い合わせを減らすことは、お客さまの時間を「1秒も無駄にしない」ことに直結すると思います。その他にもビデオ通話やチャットによる接客を対面接客と比べて遜色のないレベルで実現することを目指しました。非対面でもお客さまの満足度を損なわない接客を実現させるため、M.H.さんの指導の下、ロールプレイングによるトレーニングを繰り返し行いました。その成果もあって、開業後の問い合わせ等は通常のホテル運営に比べて、大幅に減少しています。
STORY03
近い将来、数店舗の出店に向けた、
「B4T」の積極的な拡大戦略。
近い将来、
数店舗の出店に向けた、
「B4T」の
積極的な拡大戦略。
開業時の感じたこと、今後の「B4T」について教えてください。
S.H.
2023年7月に「ホテルB4T赤羽」、同年11月に「ホテルB4T田端」が開業しました。開業の日は午前中にセレモニーがあり、私が司会を担当しましたが、安堵感と共にここから新しい物語が始まると、スイッチを切り替えたことを覚えています。
M.H.
そうですね。これから始まるという気持ちが強かったですね。午前中のセレモニーが終了後、午後3時からのチェックインで最初のお客さまを迎えることになりました。ロビーにはサービススタッフが常駐しておりませんが、安全確保のため防犯カメラは設置しています。S.H.さんも含め私たちスタッフは、最後まで「Suica」利用に際して不安は隠せないものがありました。ホテルのルームキーとしては日本初の試みであり前例がない。だからこそモニターを通して、お客さまが「Suica」でチェックインしスムーズに入室されたことを確認できたときにはメンバーから歓声が上がりました。お客さまの宿泊パターンやニーズに応じた微調整・改善が必要な部分もありましたが、まずはスタートできたことに、安堵感がありました。この2館の開業と並行して、K.H.さんの業務が本格化することになりましたね。
K.H.
ええ。私は「ホテルB4T田端」の開業を2ヶ月後に控えた頃にプロジェクトに参画しました。ブランドの軸やコンセプトが完成されている中で、私自身、異動や出向でホテル業務から離れていたこともあり、「B4T」のことを理解するのに時間がかかりました。過去の資料に目を通し、上司やメンバーとコミュニケーションを取りながら、理解度を高めていきました。私のミッションは明確で、「ホテルB4T赤羽」「ホテルB4T田端」に続く「B4T」の新規開発、つまり新たな「B4T」を生み出すことです。
S.H.
K.H.さんは赤羽や田端のホテル運営に関わるわけではなく、新たな「B4T」をつくり出す最前線にいると思いますが、現在のマーケットをどのように見ていますか?その中で、具体的に新規開発のためにどのような取り組みを進めているのでしょうか?教えてください。
K.H.
アフターコロナを経て、インバウンドを中心にお客さまのホテル利用が急速に回復していますが、その反面、業界では人手不足が慢性的な課題になっています。そのため「B4T」のような、省人化オペレーションのスマートホテルは、今後さらに増えてくると考えています。その中で、現在JR東日本グループ各社をはじめ、候補地に関する打ち合わせや現地マーケットの調査、競合ホテル等の試泊などを行っています。お客さまの声や社会のニーズを的確に把握することが、今まで以上に重要になってくると考えています。
M.H.
私もS.H.さんも、今後の出店戦略に関わっていますし、実際に候補地の視察にも同行しています。「B4T」の拡大に向けた、具体的な戦略を開発担当の立場から聞かせてください。
K.H.
「B4T」は効率的な運営形態であることが大きな特徴です。そのため30室程度の少ない客室であっても出店が検討できるため、首都圏の中間駅や地方都市、狭小な立地などにも出店を拡大していく考えです。また、新規開発だけでなく、既存ホテルのリブランドや、他用途の建物からのリニューアルなど、入居物件の選定も柔軟に行っていきたいと思っています。将来的には、JR東日本グループの直営方式のみならず、地元企業をはじめとしたグループ外企業とのフランチャイズ方式での出店も目指します。現在「ホテルB4T赤羽」の46室、「ホテルB4T田端」の99室で、トータル145室を運営していますが、2025年までに500室とするのが目標です。
M.H.
500室という目標はメンバーが共有していると思いますが、オペレーションにおいてその規模までは現在の「ホテルB4T赤羽」と「ホテルB4T田端」を運営しているインフォメーションセンターの人員で対応していく考えです。500室のお客さまに対して非対面でありつつも少人数で接客対応を実現することは、人手不足という業界の課題に少なくないインパクトを与えることになると思いますね。
CHAPTER 04
働きやすい環境が
お客さま満足度向上を生む。
選ばれ、愛されるホテルに
進化するために。
働きやすい環境が
お客さま満足度向上を
生む。選ばれ、
愛されるホテルに
進化するために。
開業後のお客さまからの評価を教えてください。
M.H.
「Suica」がルームキーになるというインパクトは大きなものがありましたが、好意的なご意見が大半です。また、社内・社外問わず多くの問い合わせをいただきました。どのように非対面接客を行っているのか、1拠点(インフォメーションセンター)で複数(2館)のホテルを管理するオペレーションについて等、非対面接客、省人化運営に対しての反応が顕著でした。インフルエンサー等メディアにも取り上げていただき、スマートホテルに対する世間の関心を実感しました。
K.H.
「B4T」のチャレンジでもあった非対面接客や省人化運営、「Suica」の活用はお客さまにも好評をいただいています。実際、「人と会わずにチェックイン・チェックアウトを行えるのでスムーズだった」「困ったときでもリモートでサポートいただけるので安心でした」といった声をいただいています。今後も「B4T」の特徴であり常に追求していくテーマでもある「1秒も無駄にしないスマートな顧客体験」を提供できるよう、ブラッシュアップしていきたいと思っています。
S.H.
「B4T」は繰り返しとなりますが、非対面接客を基本としています。そのため、通常のホテルのようなスタッフの対面による「おもてなし」ではない形でご満足いただかなくてはなりません。では代わりにどのようなおもてなしやホスピタリティの提供が可能かをプロジェクト内で何度も議論を重ねた結果、お客さまが滞在時に使用される備品やアメニティの重要性に着目し、厳選したものを導入しました。その結果、「備品の機能性がいい、入浴剤の香りが良くリラックスできた」等の声をいただいています。非対面でもホスピタリティを提供できること、お客さまに満足いただけることを実感しました。
最後に、今後の目標を教えてください。
S.H.
現状に留まらず、宿泊されたお客さまの声をもとに、よりお客さまに満足してもらえるよう、備品やアメニティの見直し、あるいは使用しているシステムのUI(User Interface)改善など、アップデートできることを積極的に提案・実践していきたいです。また現状、30~40代のお客さまを中心に支持をいただいていますが、もっと多くの若い層の方々にも利用していただける取り組みを進めていきたいと考えています。
K.H.
私は「B4T」のファンを増やし、選ばれるホテルになることが目標です。今後「B4T」のようなスマートホテルは当たり前の世の中になると考えています。確実に競合ホテルが増える中、拠点数の拡大を進めることと並行して、「B4T」がお客さまにとってより良いホテルに進化する一翼を担っていきたいと思っています。またJR東日本グループとして多様な地域に出店することは、地域創生や沿線活性化に貢献することにも繋がっていくと思っています。
M.H.
K.H.さんが言うように、今後スマートホテルは確実に増えていくと思いますし、その先駆けである「B4T」は出店の参考とされるホテルになると思います。そのため今後はB4Tならではの強みを打ち出していき、競争優位性を保ちつつCSに繋げる必要があると考えています。そしてCSはESがないと成り立たない。インフォメーションセンターのスタッフの働きやすさ向上(ES)と、お客さま満足度向上(CS)の両立は常に念頭に置いています。私は現場責任者としてオペレーションの安定化、円滑な業務遂行が大きな役割ですが、同時にCSとESを両立させることを重視しています。すなわち、メンバーがモチベーション高く、日々やりがいを持って活き活きと働く環境をつくることも私の役割であり、それがCS向上に繋がり、さらに「B4T」が多くのお客さまに選ばれ、支持され、愛されるホテルチェーンとなることに繋がっていくと考えています。